稲美支部例会に部員がお世話になると同時に、顧問も一緒に対局しました。
稲美支部例会では一般の方々と対局するのですが、白陵と同じように播磨南も部員および顧問の先生が参加していました。
お互い顧問はS級に参加しており、対局が実現しましたので、その自戦記をご紹介します。
▲先手 播磨南の先生 vs △後手 白陵の顧問
播磨南の先生は、兵庫県のアマチュア大会で名を轟かせる新進気鋭。
稲美支部例会では何度か対局したことがあるため、顧問の得意戦法である「キントレ流中飛車」封じを、迎え討つことになりました。
相手のいきなりの角交換は後手が手得となり、損のない展開に。
しかし、ここから無理やり中飛車にすることはできるが、かなり駒組を制限されることを懸念し、居飛車を選択しました。
居飛車を選択する理由に、端歩が突いてあること。
これは早繰り銀や棒銀の展開になったら、端歩の突き合いが後手にとって得になるため。
しかし、ほとんど居飛車を指さないこともあり、手拍子で指導対局でよく指す「角換わり腰掛け銀」の出だしにしてしまいました。
ここから数手進んだの次の局面。
慣れない居飛車のため、終盤に時間を残さねばと、ここも手拍子で指しましたが、
角換わりでよくある厳しい一着がありました。
△7三桂を指して時計を押してすぐに気付き、絶望を感じました。
本譜の▲3五歩が鬼のような厳しさ。
①△3五同歩は▲4五角が、▲6三角成と▲2三角成の両狙い。
②△3二金には▲3四歩。対して、△2二銀では歩損が大きく敗勢。かといって、△3四同銀は▲7五歩△同歩▲7四歩△同銀▲5六角で敗勢。
角換わりをするとよく出てくる筋なので覚えておきましょう。
本譜は①の△3五同歩を選択して次の局面。
ここでは、ぱっと見で見えるのが△3四角。
▲同馬△同銀で馬を消すことができるが、やはり▲7五歩が厳しい。
手筋は△6五桂だがここでは▲7三角の王手飛車がある。
かといって、▲7四歩と取り込まれると▲7三歩成を狙われて敗勢。△6三銀も▲7四歩△同銀▲5六角が、銀の両取り。
したがって、△3五歩を活かして△6五歩と突くことに。一瞬意味が分かりにくいかもしれないが、△6四角が案外受けにくく、▲7三歩には△7四歩と畳み掛ける狙い。
というわけで、相手も△6四角を見越して▲4六歩。
単純な△6四角では簡単に受かってしまうので、序盤でポイントを上げた端を狙うことに。
△9五歩▲同歩△9七歩。
実はこの△9七歩に対する対応が難しい。それがこちらの狙い。
①▲同香は△7五歩▲同歩△8五桂▲8六銀△9七桂成▲同銀△7六香が一例。
②▲同桂は△9五香▲9六歩△同香▲9八歩△7五歩。
③▲8六銀は△5五角。▲7七桂に△8五桂で畳み掛ける狙いである。
また、桂を入手すればよいタイミングで△3六桂が狙えるのもポイントが高い。
したがって本譜は▲3四歩△4四銀▲7五歩。
▲7五歩は、左右から攻めるお手本のような攻め。
しかし、ここでは▲4五歩の方が良かった。
①△同銀右は▲3七桂△5四銀▲4五歩△5五銀▲3三歩成。
②△同銀左は▲3七桂△4六銀▲3三歩成△同桂▲同馬△4二金▲1一馬△3六歩▲6四香で
やや先手良かっただろう。
本譜の▲7五歩には、「振り飛車党」らしい流れるようなさばきの攻めがあった。
△8五桂▲7六銀△7五歩▲同銀△5五角。
この△5五角が△9九角成と△4六角があって後手よしとなった。
▲7七歩が普通の受けだが△7二飛が厳しい。▲8六銀でも▲8四銀でも△7六歩と合わせて無理やり角のラインをこじ開けるのが受からない。
したがって強く▲7四歩が油断ならない一着。
△9九角成と香を取れるがそれ以上に▲7三歩成が厳しい。7三の地点にと金ができると後手が勝てない流れとなる。
△7二歩と受けるのは簡単だが、飛車の横利きがなくなる+7筋を歩で攻められない。これが相手の▲7四歩の狙いである。
というわけで、強く△7二飛と寄り、▲6六歩△同歩▲7七桂と無理やり角のラインを止めて受けてきた。
ここで手拍子で△同桂成はもったいない。▲同金〜▲6六銀や▲6六金を狙われて、相手の指した▲6六歩の顔が立つ格好だ。
ここでは、△7六歩と打つのが厳しく、▲8五桂△同歩▲4七銀に△6三桂が気持ちのいい一着。
これは△7五桂〜△6七歩成と桂の二段活用がある。
かと言って、▲8四銀は△7四飛が気持ちのいいさばき。△6七歩成▲同金△7七歩成が受からない。
そこで、▲5六歩で角にアタックするが、△6七歩成▲同金△9九角成と進んで次の図。
△7五桂を回避して▲6六銀は△6五歩が厳しく、▲6四銀と逃げるしかないが△7四飛がやはり気持ちのいい一着。
▲6三銀不成と桂を取られるが、
△7七歩成が、隙を見せない一着で厳しい。
ここでは、手拍子で△6三同銀と取ると▲7八歩と受けて長引いてしまう。決めるところは決めた方が得である。
以下、▲5九玉△6三銀▲5七金△6八銀▲4八玉△5七銀成▲同玉△6七と!
▲4八玉△6六馬▲3八玉△5七とで全軍躍動し、以降は押し切った。
上の図で▲同玉は△7七飛成▲5八玉△5七金で先手玉は寄っている。
△6七とは飛車も馬も「と金」も活躍させる「一石三鳥」の一手。
本局はうっかりから始まるまずい出だしではありましたが、中盤の攻防は非常に見応えのある内容ではないかと思い、ご紹介しました。
また、このような面白い将棋が指せたらご紹介したいと思います。